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「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法案」が6月中に議会で成立した。来年の6月までに施行されるとのことである。

「所有者不明土地」とは不動産登記簿等の公簿情報等をもとに所有者を調査しても判明しない、または判明したとしても連絡がつかない土地のことである。相続時に何らかの理由により所有権移転登記がなされていないことが主な原因となっている。これまでも所有者不明土地は、土地の放置による災害時の危険や所有者特定が困難なことによる公共事業等の円滑な推進の妨げになるなどで問題になってきた。今回の対策で「所有者が分からない土地」を、「地域に役立つ土地」に活用されることが見込まれる。

法案の概要は以下の通りである。

(1)所有者不明土地を円滑に利用する仕組み

国、都道府県知事が事業認定した公共事業について所有者不明土地を利用する場合、収用委員会に代わり都道府県知事が円滑に裁定できるようにする。また、地域住民等の福祉・利便の増進に資する事業について、都道府県知事が公益性を確認し、一定期間の公告に付した上で、利用権を上限10年間設定できるようにする。つまり公園や仮設道路、文化施設などが公益目的で利用できるようになる。(なお、所有者が現れ明渡しを求めた場合は、期間終了後に原状回復、異議がない場合は延長可能となる。)

(2)所有者の探索を合理化する仕組み

土地の所有者の探索に必要な固定資産課税台帳や地籍調査票などの公的情報について、行政機関が利用できるようにする。更に、長期間、相続登記等がされていない土地について登記官が、「長期相続登記等未了土地」であるとして登記簿に記録すること等ができるようにする。

(3)所有者不明土地を適切に管理する仕組み

財産管理人の選任は民法上では検察官や利害関係者のみに認められているが、所有者不明土地の適切な管理のために特に必要がある場合に、地方公共団体の長等が家庭裁判所に対し財産管理人の選任等の請求を行えるようにする。

現在所有者不明土地の合計面積は九州全土(約410万ha)より大きいといわれていて、今後高齢化による相続の増大によりさらに増え続けることも想定される。「所有者不明土地」の公共だけでなく民間利用の検討も必要であり、空き家対策と合わせてこの問題も考えていかなければならない大きな課題である。