日本語 English
不動産鑑定・コンサルティング・情報分析 ハイビックス株式会社
お問い合わせはこちら

宿泊税動向

ホテル・レジデンス(民泊)投資において、宿泊税はもはや一部の観光都市限定の話題ではありません。2025年6月現在、自治体による「独自財源」確保の動きは全国規模で臨界点を迎えています。

  1. 大阪府:9月増税を控えた「周知・システム改修」の最終局面

2025年9月1日に控えた大阪府の宿泊税改正が目前となっています。

  • 改正内容のインパクト: 免税点の引き下げ: 課税対象が「7,000円以上」から「5,000円以上」へ拡大。
  • 税額の上昇: 最高額が300円から500円へ引き上げ。
  • AMとして: 6月は、9月以降の予約が本格化する時期で、OTA(オンライン旅行代理店)や自社予約サイトの表示、およびPMS(宿泊管理システム)の改修が、改正後の税率に正しく対応しているか最終確認を行うタイミングとなります。
  1. 全国的な「導入ラッシュ」と自治体同意の加速

6月、総務省が新たに複数の自治体(旭川市等)の宿泊税新設に同意したことで、全国的な導入マップが塗り替えられている状況にあります。

□すでに条例が可決され、具体的な施行日が迫っているエリア

自治体 施行予定時期 内容・特徴
大阪府(増税) 202591 免税点を5,000円に引き下げ、最高税額を500円へ。万博直前の駆け込み対応がピーク。
岐阜県

高山市

2025年10月1日 一律150円(予定)。インバウンド比率が極めて高く、先行事例として注目。
岐阜県

下呂市

2025年10月1日 入湯税に加え宿泊税を導入。温泉地における二重課税の議論が活発。
熊本市 2025年内 半導体バブル(TSMC進出)によるビジネス客増を背景に、一律200円を検討。

 

□この時期に導入方針を固め、2026年度の施行を目指しているエリア

北海道エリア(最重点注目エリア)

北海道は「全道一律」と「市町村独自」の二階建て課税を巡る調整が山場を迎えています。

  • 北海道(道全体): 宿泊料金に応じて100円〜500円の導入を検討中。
  • 札幌市: 独自に200円〜500円の上乗せを検討。道税と合わせると最大1,000円近い負担増となる可能性があり、ホテル稼働率への影響が懸念されています。
  • 倶知安町(ニセコ): すでに導入済み(定率2%)ですが、道税導入に伴う二重課税の調整が議論の焦点。

関東・中部・近畿エリア

  • 千葉県浦安市: 東京ディズニーリゾート周辺の宿泊客をターゲットに、2025年度中の条例化、2026年度施行を目指し協議会が活発化。
  • 静岡県熱海市: 静岡県内初の導入を目指し、宿泊料金に応じた段階的課税を検討中。
  • 京都市(見直し): すでに導入済みですが、修学旅行生の免税範囲や、民泊への課税強化など制度の「実効性向上」に向けた見直し論議が再燃。

九州エリア

  • 福岡県内自治体: 福岡市・北九州市に加え、太宰府市などの観光拠点で独自導入の検討が加速。

 

4.注視すべき「特異的な検討例」

従来の「定額制」ではなく、売上に連動する「定率制」や「使途の限定」を打ち出す自治体が増えています。

  • 定率制の検討: ニセコ(倶知安町)に倣い、富裕層向けラグジュアリーホテルが多いエリアでは「一律数百円」ではなく「宿泊代金の2〜3%」とする案が出やすくなっています。これは、ADRが高い物件ほど収益へのインパクトが大きくなることを意味します。
  • ビジネス客への波及: 観光地だけでなく、熊本市のように「ビジネス需要」をターゲットにした導入検討は、レジデンス型ホテルやビジネスホテルの利回りに直結します。
  1. 実務:宿泊税対応のための「補助金申請」期限

自治体は導入に伴う宿泊施設の負担軽減策として、システム改修費用の補助金を用意していますが、6月はその申請受付が集中する月です。

  • 補助対象: PMSの改修、自動精算機の導入、領収書発行システムのアップデート等。
  • 注意点: オペレーターに対し、補助金の活用漏れがないか確認を徹底してください。補助率は「全額」から「1/2」まで自治体により異なりますが、NOIを守るための重要なコスト削減策となります。
  1. 投資評価への影響:ADRとネット収益の乖離

宿泊税の「徴収義務」は宿泊施設側にあり、投資評価上下記の点に留意が必要です。

  • グロスADRの錯覚: 宿泊税が加算された状態でADR(平均客室単価)が上昇して見えても、それは物件オーナーの利益にはなりません。
  • 価格弾力性の懸念: 低価格帯(5,000円〜10,000円)のホテルでは、数百円の税加算が宿泊客の「割高感」を招き、実質的な素泊まり料金を下げざるを得ないリスクを孕んでいます。6月のパフォーマンス分析では、税抜きでの実質賃料推移をシビアに追う必要があります。