令和7年7月1日に、国税庁により2025年分の相続税路線価が公表されました。令和7年の全国の地価動向では、全用途平均で前年度比+2.7%の上昇値となっており、4年連続で上昇の傾向です。上昇の要因としては、都市部を中心とした再開発の進展や訪日外国人観光客(インバウンド)の回復、低金利に起因する不動産投資の活性化等が考えられます。
都道府県別の路線価の前年度比は、東京都が最も高く8.1%、次いで沖縄県の6.3%、福岡県の6.0%と続いています。東京都・沖縄県は主としてインバウンド需要の取り込みとマンション需要によって、福岡県は2015年から福岡市が主導している天神エリアにおける都市再開発プロジェクトが功を奏したことによって、それぞれ高い上昇率を記録したものと思料します。
愛知県に目を向けると、前年度比+2.8%の堅調な上昇値となっており、令和6年の上昇値(前年度比+3.2%)と比較すると伸び率が縮小に転じています。伸び率が縮小した原因の一つとして、経済界からは「名古屋は都市間競争で、大阪、福岡や札幌などと比べ比較劣位にある」(名古屋商工会議所 嶋尾正会頭)との指摘があります。また、各地で地価上昇の要因となっているインバウンド需要も、愛知県がその需要を満足に喚起しきれていないことも一因と考えられそうです。
一方で、名駅地区においてはリニア中央新幹線の開業に向けた名古屋駅周辺の再開発の計画が進行中で、名古屋鉄道株式会社が事業化の決定により内容を公表しました(2025年5月26日)。その事業費は9,000億円にも上りオフィス、ホテル、商業、バスターミナル等の諸機能を複合化するとともに、地下の駅も再構築する、というものでした。栄地区では令和5年に入り開業した「中日ビル」、現在建設中の「ザ・ランドマーク名古屋栄」等、名駅地区と争う様に多くの新規商業施設が見られます。これら両地域の再開発は名古屋という都市の発展に大きく資するものであり、地価上昇の要因の一つになるものと期待します。
再開発が行われている名駅西地区(2025年7月 著者撮影)