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建物等の関連移転とは(公共用地補償編)

公共補償等の用地買収では、公共事業で必要とする事業用地を直接買収することを本来の目的であることからすれば、建物等の移転補償は、一般的に用地買収により必要とする事業用地上に直接支障となる建物等が補償の対象になるものと考えます。しかしながら、当該用地部分上のみの建物等の移転では従来通りの機能回復ができないことも十分考えられます。そこで、「公共用地の取得に伴う損失補償基準(昭和37年10月12日用地対策連絡会)」(以下、「補償基準」と言う)の第28条第1項後段には以下の通り規定されています。

 

●補償基準第28条第1項後段(建物等の移転料)
・・・・・・ 建物等が分割されることとなり、その全部を移転しなければ従来利用していた目的に供することが著しく困難となるときは、当該建物等の所有者の請求により、当該建物等の全部を移転するのに要する費用を補償するものとする。

 

上記基準は、①移転後、従来通りの利用価値が著しく失われ機能回復できない場合や、②当該建物等の所有者の請求(相手方の請求が確認できれば、請求は口頭、書面どちらも可能)の場合に、残地部分の建物等の全部を移転することができる旨規定されています。このことを用地実務においては「関連移転」と言われており、建物等の有形的分割の可否のみならず、用途上の機能分割が可能か否か判断していきます。例えば【図1】では、小規模商店等を営む家族経営の場合で、店舗と住宅が同一敷地にあって一体利用されており、生活支障の観点等を総合的に鑑みて、いずれかが支障となる場合は、他の支障とならない部分についても機能的に分離できないため関連移転として、店舗のほか住宅に関しても同時に建物移転補償の対象として認められる可能性が出てきます。

 

 

 

 

他方、【図2】のような場合においても関連移転が認めらえるか否かが論点としてあります。【図2】は、生活利便上から鑑みて、主たる住宅と道路向かいの従たる物置とは一体として用途利用されている場合、主たる住宅が用地補償の起業地内の対象となっているのであれば、上述の①及び②の考え方に照らして補償を検討してみる必要があります。しかしながら、主たる住宅と従たる物置とは必ずしも同一場所になければならないことではない場合があります。そこで、補償基準第28条第1項以外にどの補償基準の条文を参照するかについては、補償基準第59条を根拠として考えてみる必要があります。

 

●補償基準第59条(その他通常生ずる損失の補償)
 本節及び前六節に規定するもののほか、土地等の取得又は土地等の使用によって土地等の権利者について通常生ずる損失は、これを補償するものとする。

 

「通常生ずる損失」の一般的な範囲からみて、主たる建物を移転補償することで、道路隔てた従たる物置まで移転補償に至る必要があるか否かの判断が必要となり、この場合、主たる建物と従たる物置が一定の機能上つながりがあるとしても、分離移転により従来の目的が著しく困難になるとは考えられず、【図2】の状況からこの程度であれば、物置の機能としての支障は、建物等の所有者に受忍すべきものと考えていく可能性があります。したがって、【図2】の建物A・B・Cのような場合においては、建物Aが用地買収の敷地上にあり直接補償対象となれば建物Bの部分も随伴するものと判断されますが、建物Cについては所有者において受忍すべき可能性が出てくるものと捉えられます。