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配偶者居住権と損失補償

1.配偶者居住権の新設

親族間の遺産分割に関する争い事案が近年増加傾向にあり、そういった中で平成30年7月13日に公布された民法一部改正において、配偶者の居住確保を重点とした「配偶者居住権」が新たに創設され、令和2年4月1日より施行されました。

 

2.配偶者の居住権を保護するための方策

配偶者居住権には短期と長期に分けられており、概要は下記のとおりです。

 

(1)配偶者短期居住権

配偶者は、相続開始の時に相続人所有の建物に無償で居住していた場合に、遺産分割で居住建物が確定するか又は相続開始から6ヶ月を経過する日のいずれか遅い日までの間、引き続き無償で建物に住み続けることができます。建物滅失により権利消滅、譲渡不可、賃貸借不可、登記不可となっています。

 

(2)配偶者長期居住権

配偶者に、終身又は一定期間、被相続人の居住建物に対し使用・収益を認める法定の権利を配偶者が取得することができます(遺言可。20年以上の婚姻期間必要)。建物滅失により権利消滅、譲渡不可、賃貸可(建物所有者の承諾必要)、登記必要となっています。

 

3.配偶者居住権に関する補償について

配偶者居住権が建物移転料から配分して補償する方法として、公共用地の取得に伴う損失補償基準(以下、「用対連基準」という)に規定されることとなりました。建物に係わる部分に関しては用対連基準にて、敷地利用に係わる部分に関しては公共用地の取得に伴う損失補償基準細則(以下、「用対連細則」という)に規定されるところとなりました。なお、配偶者短期居住権は補償対象外としています。

 

(1)建物に係わる部分の配偶者居住権者補償額

S 従前建物の推定再建築費
N 従前建物の標準耐用年数
従前建物の経過年数
配偶者居住権の存続年数(平均余命期間又は協議・遺言書期間)
n+m 配偶者居住権の存続期間満了時の
年利率(理論上の利率、上限は民法上の利率と推定)
α n年での価値補正率
β (n+m)年での価値補正率

 

(2)敷地利用に係わる部分の配偶者居住権者補償額

配偶者居住権を考慮しない土地評価格
T’ 配偶者居住権の存続期間満了時の配偶者居住権を考慮しない土地評価格

※算定式においてはTとT’は同額としています。

 

4.配偶者居住権以外の通常生じる補償について

通常生じる補償(以下、「通損補償」という)として、動産移転補償、仮住居補償、移転雑費補償等が考えられますが、借家人継続に準じて必要に応じて算定することとなっております。