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空家等対策の推進に関する特別措置法の改正

令和5年12月13日、空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律(令和5年法律第50号)が施行されました。以下、空家等対策の推進に関する特別措置法の概要及び法改正の概要について簡易に説明いたします。

・空家法(空家等対策の推進に関する特別措置法)とは

空家法(空家等対策の推進に関する特別措置法)とは、「空家問題への対策として行政の空き家に対する具体的な対応を定めた法律」のことです。法第1条では下記の通り規定されています。

 

「この法律は、適切な管理が行われていない空家等が防災、衛生、景観等の地域住民の生活環境に深刻な影響を及ぼしていることに鑑み、地域住民の生命、身体又は財産を保護するとともに、その生活環境の保全を図り、あわせて空家等の活用を促進するため、空家等に関する施策に関し、国による基本指針の策定、市町村(特別区を含む。第十条第二項を除き、以下同じ。)による空家等対策計画の作成その他の空家等に関する施策を推進するために必要な事項を定めることにより、空家等に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、もって公共の福祉の増進と地域の振興に寄与することを目的とする。」

 

「行政の空き家に対する具体的な対応」としては、主に下記のような内容があげられます。

〇毎年の国土交通省住宅局による空き家の実態調査及び情報提供

〇空き家の所有者へ適切な管理の指導

〇空き家の跡地についての活用促進

 

・空き家、特定空家等との定義

空き家については、法第2条1項にて、「「空家等」とは、常に居住やその他の使用がされていない建築物および敷地」と規定されています。つまり、通年で人の出入りがなく、水道・ガス・電気などの使用が確認できなかった場合等、が空き家と判断されます。

さらに、法第2条第2項に規定されている、特定空家等については、下記の4項目の状態にあると認められる空家等で、助言等を受けても改善されない場合、特定空家として行政から指定を受けます。特定空家に指定されると「行政により税制措置(固定資産税等の住宅用地特例からの対象除外)や法的措置(50万円以下の罰金)等がとられる」ことになります。

①そのまま放置すれば倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態

②そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態

③適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態

④その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

 

・空家法改正の概要

改正前(平成26年度制定)の空家法(空家等対策の推進に関する特別措置法)では、緊急性に鑑みて、周囲に著しい悪影響を及ぼす空家(特定空家)への対応を中心に制度的措置が定められていました。

しかし、使用目的のない空家は、約20年で約1.9倍に増加しており、今後、更に増加する見込みのため、これまでの制度では対応に限界があるとのことから令和5年に改正が行われました。

 

令和5年に改正の具体的な改正内容としては、主に特定空家除却等のさらなる促進「③特定空家の除却等」に加え、周囲に悪影響を及ぼす前の有効活用「①活用拡大」や適切な管理「②管理の確保」が総合的に強化されました。

 

 

① 活用拡大

空家等の活用拡大は、地域の拠点となるエリアに空き家が増え続けることによる、本来の地域の機能の低下を防止することが狙いです。

具体的には、空家等活用促進区域((例)中心市街地、地域の再生拠点、観光振興を図る区域等)を設定し、市区町村が区域や活用指針等を定め、用途変更や建替え等を促進します。つまり、安全確保等を前提に接道に係る前面道路の幅員規制の合理化や指針に合った用途に用途変更等する場合の用途規制等の合理化等を行います。また、指定区域内では、市区町村長から所有者に対し、指針に合った活用の要請や財産管理人による所有者不在の空家の処分等が行えるようになります。

 

② 管理の確保

空家等の管理の確保は、対処が必要となる「特定空家等」の増加を防ぐために、事前防止策として、国や自治体が「管理不全空家等」を設定することができるようになります。

具体的には、放置すれば特定空家になるおそれのある空家(管理不全空家)に対し、管理指針に即した措置を、市区町村長から指導・勧告できるようになり、勧告を受けた管理不全空家は、固定資産税の住宅用地特例(1/6等に減額)を解除されます。また、市区町村から電力会社等に所有者不明の空家等に対して情報提供を要請することができるようになり、所有者把握の円滑化が図られています。

 

③ 特定空家の除却等の促進

空家等の特定空家の除却等の促進は、市区町村長に勧告等の権限や、行政に命令等の手続きを経ずとも代執行が可能となる権限が付与されるので、迅速な安全の確保が可能となります。

具体的には、空家等の状態の把握のために市区町村長に報告徴収権が与えられることで、勧告等が円滑化されます。また、命令等の事前手続を経るいとまがない緊急時の代執行制度の創設や、所有者不明時の代執行、緊急代執行の費用は、確定判決なしで徴収することができるようになり、代執行が円滑化されます。さらに、相続放棄された空家等に対して、市区町村長に財産管理人の選任請求を認め空家の管理・処分(管理不全空家、特定空家等)の促進が図られます。

 

・空家法改正を受けて考慮すべき事項

これまでは、空き家が発生しても、地方税法(昭和25年法律第226号)第349条の3の2及び第702条の3の規定に基づき、住宅用地に対する課税標準の特例(以下「住宅用地特例」という。)の適用を受けるものとして、その固定資産税及び都市計画税が減額されていました。そのため、特定空家等に指定されるほどでない場合は、あえて費用をかけて解体せず、そのまま放置することも可能でした。

しかし、法改正により、適切な管理が行われていないことによりそのまま放置すれば特定空家等に該当することとなるおそれのある状態にあると認められる空家等については、法第13条第1項に規定する「管理不全空家等」と位置づけられ、市町村長は同条各項の規定に基づき、管理不全空家等の所有者等に対して指導及び勧告を行うことができることとなり、勧告を受けた場合は、地方税法の上記規定により、住宅用地特例の対象から除外されることとなりました。そのため、空き家を所有する場合は、「管理不全空家等」に該当してしまわないように、定期的に空き家の状態を確認し、適切に管理しておかなければ住宅用地特例の対象から除外される可能性があります。また、今後も空き家に関する対策は更に強化されていくことが予想されます。

このように、今後は放置されている空き家がある場合は、空き家の出口戦略を検討し、場合によっては早めに売却を決断するなど、これまで以上に管理の重要性が増していることに留意が必要です。また、空家等が存する地域が、空家等活用促進区域に設定された場合、指定地域の接道規制や用途規制の合理化等の措置が講じられ、地域全体の価値が高まる可能性があることから、法改正による空家や地域に与える影響をこれまで以上に注視し、予測や検討を行っていく必要があると考えられます。