近年データセンター(以下DCという)の市場が拡大してきています。DCとは、インターネット用のサーバー等の装置を設置・運用することに特化した建物の総称を指す。データを置く場所としての不動産運用(ハードウエア等の物理的なものを含む)もしくはデータ管理をアウトソースすることが目的になるため、また自然災害等に備えるBCP的視点からもDCを利用するケースが自前での運用よりも増えています。
現在日本のDC集積はアメリカ・中国に次ぐ世界3位の数を誇るが、今後の5Gによるコミュニケーションの増大により、際限なく上昇するトラフィックや、自動運転や画像・音声認識・ロボット分野等におけるディープラーニング等によりさらに扱うデータ量が増えていく状況にあります。今後2025年までに現在ある分の倍以上のハイパースケールDC面積の投資が予定されています。
このように新設ラッシュが見込まれており、背景にはクラウドサービス等の拠点としての高水準・好条件のDCが求められていることが挙げられます。
[求められる条件]
・建物条件:耐震設計(耐震・制震・免震構造)、建築基準法遵法性、高PML、高床荷重、高機能空調(冷却用システム)
・電源条件:自家発電設備、無停電装置(UPS)設備、電源回路の冗長性(副・予備回線等)
・セキュリティ:建物・敷地・設備室・サーバー室への複層セキュリティ、生体認証
・災害対策:対火災性能(防災・消火設備)、対雷性能、対浸水対策
間断なく安定的に稼働させる施設が前提のため、設備的にも物理的にも継続性・リスク管理に長じた特殊な建物となります。立地についても、なるべく電力コストが低い、災害リスクが低いことが求められる場合が多いです。
[使用されるサービスの種類]
(ハウジング・コロケーションサービス)
ハウジング方式は、データセンター内の物理スペースやラックを借りて運用する方式で、自社の状況に合わせて、物理スペースやラックのサイズ・契約数を選ぶ(部屋貸し、ラック貸し、フロア貸し、一棟貸し等があります)。ハウジング方式のメリットとして、ユーザー自身が要件・サービスに合わせたサーバーやインターネット回線を選択できる点が挙げられ、最低限の設備を自社で用意する必要があるため、初期投資が発生したり、導入までの期間が長くなるというデメリットがあります。基本的にはサーバーの運用管理についても自社で実施する必要があります。
(ホスティングサービス)
ホスティング方式は、利用するサーバー機器やインターネット回線も含めて、事業者から借用し運用する方式で、各種機器はデータセンター提供者が所有しているため、建物関係だけでなく、ハードウェアの管理・保守は提供側が対応します。
ホスティング方式のメリットとして、自社で設備を購入する必要がないため、初期費用の投資が不要で、導入までのリードタイムが早いという点が挙げられます。ただし、機器にトラブル等が発生した場合に自社で修復・メンテナンス作業を行うことはできず、提供側の復旧作業に依ることから、復旧予測を立てづらいといったデメリットがあります。
利用する側からすると、ホスティングサービスを使用したレンタルサーバーサービスとクラウドサービスは似たような方式であるが、物理的にサーバーを共有するレンタルサーバーと仮想サーバーを供給するクラウドサービスは別物です。
ただしクラウドサービス運用事業者もDCの利用者であることも多く、ニーズはます一方であります。
不動産の立地として、ある程度データ利用者に近い市場立地型は東京、大阪、名古屋圏近郊に立地することが多いが、特に千葉県印西市は、海外サービサーも多く立地し、今後もハイパースケールの大型DCが建設予定となっています。これは対災害性がまず挙げられ、活断層がなく、地盤が強固であり、河川の氾濫リスクが低く、また、共同溝(地下溝)による配電であることから、台風・強風時の停電リスクが低いことが起因しています。
次に大量の電力容量及び首都圏への大規模は通信回線が、既存のDC整備時に整備されていることからDCの集積がさらに進んでいます。また、千葉県南房市及び茨城県ひたちなか市の海底ケーブルから比較的距離が近く、アメリカやシンガポールをはじめとする各国へのインターネットトラフィックの物理的な玄関口となっており、グローバルなサービスを提供するクラウド企業にとってはリスクが低いため好まれています。
現在データセンターの集積は上記印西も含め関東地方で約6割、関西地方で約2割と集中しています。これは発生するトラフィックが集中しており、人口・企業数・端末数が多い結果ともとれます。インターネットトラフィックの中継地点(IX)は大都市に集中しており、地方の通信であってもほぼ必ず都心部を経由してしまうことから、政府としても今後は災害対応のための地理的分散が求められています。また海外企業から主に求められているグリーンエネルギー(カーボンレスエネルギー)でのDC運用のため、グリーンエネルギーでの発電施設に近い立地での建設も検討されていくと思料します。