2050年までにカーボンニュートラル実現のために各国で電気自動車(EV)への切り替えが進んでいますが、国レベルでの戸建住宅や集合住宅でのEV充電設備のスムーズな普及が必要不可欠になっています。
欧州の状況
英国では11月22日に2022年から新築の住宅やオフィスなどにEV充電設備の設置義務化が公表されました。新築以外でも10台以上の駐車スペースをもつ住宅・建物の大規模改築でもこの方針の対象となります。これによりこれから新築物件を購入する人や既存集合住宅でもEV充電が容易に行えることになり、物件の付加価値も上昇すると思われます。2021年10月時点で英国全体では約26,000台の公共充電設備が設置されていますが、今後毎年最大14万5,000台のEV充電ポイントがこの施行により整備される見通しです。
ドイツでは、11月17日にEV普及に向け職場の充電施設設置の助成開始を発表しました。企業や自治体などが職場に電動車用充電施設を設置した際に補助されます。補助総額は約3億5,000万ユーロとなるそうです。
欧州最大のEV普及率を誇るノルウェーでは圧倒的にEVが普及しており、新車登録の半数以上がEVとなっています。これは税制面での優遇等政府の方針によるところが大きいといえます。
日本の現状
EV普及には公共地、住宅への充電スポットの充実が大前提となりますが、日本では公共充電スポットは順調に増え続けていて充電器の数は2018年時点で約3万台普及しています。
①日本におけるEV用充電器普及台数の推移(2015年〜2018年)
2015年 | 2016年 | 2017年 | 2018年 | |
急速充電器(台数) | 4,860 | 7,108 | 7,255 | 7,684 |
普通充電器 | 7,739 | 20,727 | 21,507 | 22,287 |
合 計 | 12,599 | 27,835 | 28,762 | 29,971 |
また、日本の充電器1台あたりのEV・PHV台数は7台で、他国と比べても割と普及しているといえます。
②各国の充電器普及台数(2018年時点)
充電器数 | 充電器1台あたりのEV・PHV台数 | |
日本 | 3.0万 | 7 |
中国 | 21.3万 | 6 |
米国 | 4.5万 | 16 |
ドイツ | 2.4万 | 5 |
イギリス | 1.4万 | 10 |
フランス | 1.6万 | 7 |
オランダ | 3.3万 | 4 |
スウェーデン | 0.4万 | 12 |
ノルウェー | 1.0万 | 18 |
出典①、②共:国土交通省・経済産業省『EV/PHV普及の現状について』
しかし新車販売台数に占めるEVの割合は2020年現在、まだ1%程度に過ぎなく世界と比べてもEVの普及が遅れているのが現状です。
消費者がEV購入を躊躇する要因の一つは既存住宅(特に集合住宅)への充電設備の導入が不十分である点が挙げられます。日本では全住戸のうち集合住宅が半数近く占めますが、戸建て住宅の家庭用電源と違いマンションなどの既存集合住宅で充電器を設置するには管理組合の合意を得ることが必要ですし、設置後の課金方法やメンテナンスなど解決しなければならない問題があります。
街中の充電スポットは充実してきていますが、普段の生活では基本的に自宅に設置した普通充電器の使用が想定されるため、住環境での設備普及は重要となります。
かつてWI-FI導入が自治体の補助により急速に普及したように新築マンションへの設置はもちろん、既存の集合住宅にも充電設備の普及率を上げるには欧州各国のように積極的に導入できる環境を整えることが必要となってきます。