従来型の中高層分譲マンションにおいては、区分所有者の権利割合が建物の専有面積割合に応じて管理規約及び登記にて共有持分や敷地利用権割合が明記配分されるケースが多い。
しかし、昨今の超高層分譲マンションにおいては、高層へ進むほど区分マンションの経済価値が増大する傾向が強いため、専有面積割合だけでは、各所有者の経済価値を充分に反映しているとは言い難い。また、業務施設床(事務所・店舗等)の売却処分等に苦慮しており、従後床価格が業務施設床より高層分譲マンション床の方が高く時価の観点から逆転しているケースもあり、高層分譲マンション床の権利配分方法が保留床と権利床との調整において注目されている状況にある。
区分所有マンションの経済価値には、階層別効用差及び位置別効用差が認められる。つまり階層や位置による快適性等による効用差が認められる場合には、これら効用差によって価格等に差異が生じるものである。不動産鑑定理論上、これらの効用差は、取引事例比較法の比準価格や収益還元法の収益価格を求める際にも考慮されるが、一般的には不動産の費用性に着目した原価法における積算価格を求める際の配分(いわゆる原価配分)に考慮される。当該鑑定理論上考えられている配分率は以下の2つが考えられている。
この方法は、区分所有権が専有部分、共用部分及び敷地利用権の不可分一体的な性格をもつことから、効用差は建物と土地とが一体となって発生したものであり、効用差を建物価格と敷地価格の双方に反映させるべきであるという考え方に基づくものである。ここでいう配分率は、近隣地域又は同一需給圏内の類似地域等に存する構造・規模・用途等が類似する一棟全体の建物及びその敷地の実質賃料・分譲価格等を基礎として、区分所有建物の存する一棟全体の建物及びその敷地の階層別効用比及び位置別効用比を求め、これに専有面積を加味して求めた階層別・位置別効用比率をいう。
当該鑑定理論上において、一般的に分譲マンションのような一棟の建物全体が単一の用途に供されている場合に多く採用されている手法と考えられている。
この方法は、区分所有権が専有部分、共用部分及び敷地利用権の不可分一体的な性格を持つことを前提としながらも、建物の使用資材や設備、仕様等が異なることにより建築費等に差異が認められる場合を除き、効用差を敷地利用権価格のみに反映させるべきであるという考え方に基づくものである。当該配分率は上記(1)から求めた階層別効用比及び位置別効用比から、建物に帰属する効用比を控除して土地の効用比(地価配分比)を求め、これに専有面積を加味して求めた階層別・位置別地価配分率のことをいい、敷地全体の価格に当該地価配分率を乗じて土地価格を求めようとするものである。(建物の場合は、建物建築費全体に通常専有面積比か建築コスト比による配分率を乗じて区分所
有権の対象となる建物価格を求める)。
当該鑑定理論上において、一般的に多目的ビル等のように階層による用途が異なり、その用途ごとに内外装等の資材、仕様が異なることによりその建築費等に差異が認められる場合に適した手法であるとされる。
超高層分譲マンションの場合、区分所有権が専有部分、共用部分及び敷地利用権の不可分一体的な性格をもつことから、効用差は建物と土地とが一体となって発生したものであり、原則効用差を建物価格と敷地価格の双方に反映させるべきと考える。しかし、都市再開発法において配分を考えた場合(都市再開発法施行令付録第四)、どのように不動産鑑定理論上と整合性を図っていくかが重要となる。都市再開発法においては各戸床の効用比配分率の考え方を以下3つに整理されている。
居住用分譲マンションの各階(又は位置)用途の同質性を前提に、土地・建物の価値総額割合を基礎として維持しつつ、上下層階及び角中間住戸の効用比に差を設ける方法。
建物価格(建築費)比は上下層階及び角中間住戸に差がなく一定とし、効用比は全て地価で差を設ける方法。
土地価格比は上下層階及び角中間住戸に差がなく一定とし、効用比は全て建物価格(建築費)で差を設ける方法。
同一用途である居住用分譲マンションの場合、上記(1)から(3)の考え方のいずれを採用するかは建築計画等によりケースバイケースである。専有面積比のみに基づき建物価格を配分する方法も考えられるが、昨今の超高層分譲マンションタイプの場合、高層階における眺望等の価値プレミアムを専有面積比だけでは反映しきれず価値の不均衡をもたらす問題を内包してしまうので注意が必要である。マンション管理規約の議決権への反映にもつながるところである。