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老朽化した建築物のアスベスト問題について

高度経済成長に伴い急速に都市化が進み、大量に建物が建造され続けてきましたが、築50年以上のマンションは2021年末で21.1万戸、10年後には約5.4倍の115.6万戸、20年後には爆発的に増え、約11.8倍の249.1万戸にもなると見込まれています。

 

築30~50年以上の老朽化マンションストック(出典:国土交通省)

 

老朽化した建築物の増加により様々な問題を引き起こす恐れがありますが、特に注意が必要なのは建物の大規模修繕や解体をするときに、石綿(アスベスト)が使われている場合です。

石綿(アスベスト)とは天然にできた鉱物繊維で、丈夫で変化しにくいことから、建材や、様々な工業製品に広く使用されてきました。石綿含有建材が多く使用された建造物はは国土交通省の建築物石綿含有建材調査マニュアルによると約280万棟に上ると言われ、その建造物の解体ピークは2028年頃になると予測されています。

アスベストに関する最大の懸念点は建造物の解体に伴うアスベスト飛散による健康被害にあります。肺がん等の健康被害の原因となることから、現在は輸入、使用などが禁止されていますが、禁止される2006年8月31日以前に着工した建物には石綿含有建材が使われている可能性が非常に高く、建物の解体時に適切な処置をしないと石綿が飛散する恐れがあります。

 

アスベストの法規制

様々な建造物の解体・改修工事はアスベスト飛散の危険性があり、アスベストへの対応や除去については、法規各方面から規制がかけられています。

・建築物の不動産取引時には宅地建物取引業法上の重要事項説明において、建物についての石綿使用調査結果の記録に関する事項としてアスベスト使用実態調査結果の記録がある場合は、その内容を建物購入者に説明することが義務付けられています。

・建築基準法では平成 18 年より吹付けアスベストなどの使用を禁止し、建築物の所有者に対して増改築時に除去することを義務付けています。

加えて、平成17年(2005年)に制定された石綿障害予防規則(石綿則)が令和2年(2020年)7月に改正されています。

 

石綿則の主な改正ポイント

改正ポイント1 事前調査者の資格要件化

工事前に石綿含有の有無を調べる事前調査について、厚生労働大臣が定める講習を修了した有資格者等が行う必要があります。(令和5年(2023年)10月から)

 

改正ポイント2 事前調査結果の届出

工事開始前の労働基準監督署への届出について

一定規模以上(80㎡以上の解体工事、100万以上の改修工事が対象) の建築物や特定の工作物の解体・改修工事は、事前調査の結果等を電子システムで届け出る必要があります。石綿の含有が無い場合も届け出が必要です。

 

改正ポイント3 作業記録の写真等による保存

石綿(アスベスト)が含まれている建築物、工作物又は船舶の解体・改修工事は、作業の実施状況を写真等で記録し、3年間保存する必要があります。

 

この他、石綿除去の作業方法についての規制も追加されています。

アスベスト製品の使用等が禁止された2006年以降に建築された建物でも解体するときには検査が義務付けられており、これは木造、鉄骨等にかかわらず課せられています。

石綿が引き起こす危険性、また、それに伴う不動産価値に対する影響については、特に老朽化した建造物を所有する不動産オーナーや建物管理会社の立場としても知っておく必要があるでしょう。