不動産の売却などに伴う登記申請時に起こりうる思わぬトラブルには注意が必要だろう。法人の営業活動中に登記事項証明書を受け取れない場合、その後の実務に与える影響が大きいため大きな問題に発展するかもしれない。
①注意点
登記とは、法務局の商業登記簿に、会社の情報を記載する手続きのことである。取引をする上で重要な情報(会社の名前、所在地、代表者、資本金等)を登記簿に記載し公開することによって、相手がどんな会社なのか知ることができ、安全で円滑な取引が可能となる。
申請人が法人であるときは,株主総会後に何らかの組織変更がある場合は商業登記を申請する。その審査期間中に所有権移転などの不動産登記の申請をする場合には注意が必要だ。通常商業法人登記を申請中は審査完了後に、登記官が申請された不動産登記の処理を行うことになる。つまり申請の審査が長引けば長期間登記事項証明書等を受け取れないことにもなりかねない。不動産などの決済スケジュールを決める段階で事前にその時期に資格証明情報にアクセスできるか確認したい。(実際には法務局の登記官が提出された会社法人等番号により、当該法人の登記情報にアクセスして確認する)
特に役員変更等の商業法人登記が集中する時期や登記が集中して申請されていた場合、処理が大幅に遅れて法人登記完了までに予定より時間がかかるケースもある。
②対策ポイント
現在、不動産登記等の申請をする場合に会社法人等番号を有する法人であるときは,原則として申請情報に会社法人等番号を記録又は記載しなければならないことになっているが、このような商業登記の審査中に行われる不動産登記については、作成から1か月以内の登記事項証明書の提供を代わりに認めることとする例外の適用があることも併せて覚えておきたい。普段から作成後1か月以内の登記事項証明書を準備し、添付して申請することでも対策となるだろう。
*「不動産登記規則等の一部を改正する省令」が平成27年9月28日公布(同年11月2日施行)され、会社法人等番号の提供の例外として、作成後1月以内の登記事項証明書の提供を認めることとされた(規則第36条1項、2項)。