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伝統的建造物の敷地に関する補正の考察について

固定資産税評価実務において、伝統的建造物群保存地区内における伝統的建造物の敷地に関し、どのような固定資産税(宅地)の影響があるのか、それは評価補正を行うか、税額増減の調整を行うのかの論点がある。
伝統的建造物の登録においては、当該建物が存することで一定の敷地利用が制限されるものと思われる。伝統的建造物群保存地区内における伝統的建造物は「文化財保護法」に則っており、当該伝統的建造物を含む「文化財」の定義では、対象となる建造物等と一体をなして価値を形成している土地等も含むとされている(文化財保護法第2条第1項)。故に、土地単独、建物単独ではなく、建物及びその敷地全体に制限等の影響が及ぶものと考える。
補正等の考察のポイントに関し、土地に及ぶ制限の影響の程度が、評価や税率その他の課税方法箇所に対し税額の増減に係わってどの程度及ぶかを下記の(1)~(2)の例示等を含め総合的に勘案していく必要がある。

例示① 自家乗用車スペースの設置の困難性からみる土地利用の制限の程度を考察
例えば、前面道路に接面可能な駐車場敷地の確保が困難なため、他で駐車するため
の支出負担相当又は貸す可能性(収益性)を逸してしまう経済的対価を算定しこれ
を反映させていく考え方。

例示② 維持・保守等の費用性からみる土地利用の影響の程度を考察
例えば、伝統的建造物を保存・維持していくための自己負担相当額を算定しこれを
反映させていく考え方。

固定資産評価基準における課税客体となる土地は、土地に存する定着物等は含まれない、いわゆる更地評価を前提としている。したがって、上述の更地を前提とする固定資産評価基準の土地評価において直接増減額を反映させることができないため、文化財保護法における土地・建物一体に影響が及ぶ性質を十分に考慮して、当該制限等の影響のうち、土地に及ぶ影響の程度がどの程度税率や評価その他の課税方法箇所に対し税額の増減に反映されるべきものかを考えていかなければならない。
上述の論点を整理していくと、各市町村等の自治体での判断に委ねられる点ではあるが、固定資産評価に対してよりも、直接税額か税率にて増減調整していく方が固定資産税評価基準の考え方に沿っているものと考えられる。

※平成30年8月17日現在にて43道府県98市町村118地区の指定