全国で老朽化したマンションが増加する中、マンション再生の現状について考えてみたい。
全国のマンションストック戸数は平成25年末の時点で約601万戸あり、そのうち106万戸が昭和56年以前の「旧耐震設計」のマンションである。問題点として、
・耐震性能の不足
・構造や設備の老朽化
・現在の居住水準に合わない広さや間取り
再生の必要性のあるマンションが年々増加する中、建替えを実現したマンションは実施中も含め全国で226件のみである。(平成26年4月1日時点)
1、マンション再生の選択肢
現在選択しとしては、①修繕・改修 ②建替え ③マンション敷地売却とあり、マンションの老朽化の程度や耐震性能、指定容積率や高さ制限などの建築的な制約、それぞれの場合の工事費等の費用など各選択肢のメリット、デメリットを比較検討し、区分所有者の意向等を確認して総合的に判断する必要がある。
次にマンション再生の主な選択肢となる「建替え」と「マンション敷地売却制度」についてみていく。
2、マンション「建替え」について
これまでのマンション再生では「修繕・改修」や「建替え」の手法が検討されてきた。しかしどちらにしても相当の費用が必要となり、また一般的には敷地売却のうえマンションの建て替えとなれば関係権利者の全員同意が必要となる。相続など個別の問題がある場合や区分所有者数が多いマンションなどは、関係権利者の合意形成をして建替えを実施することは困難を極める。
現在、多くのマンションにおいて、住民の合意形成ができず、耐震性不足のまま放置される老朽化マンションが増加しており社会的問題となっている。
3、マンション敷地売却制度について
マンション敷地売却制度は区分所有関係を解消し「マンション敷地を売却」する新たな手法である。平成26年に「マンション建替法」が改正され、耐震性能不足と認定を受けたマンションでは、各4/5以上の賛成により敷地の売却が可能となった。これまで合意形成が難しかった建替えに代わる手法となる可能性がある。
注意するべき点はマンション敷地売却制度の対象となるのは、行政から「耐震性不足が認定されたマンション」に限定されていることだ。建替えが問題となるマンションの多くでは、新耐震基準適用のものでもこれから老朽化が進みまた立地や建築条件などが悪く市場性が期待できないものが増加している。
まとめ
これまでの仕組みによる「建替え」や「修繕・改修」だけでは、各区分所有者の相当の負担が必要となってしまうため老朽化したマンションの再生は困難といえる。マンション敷地売却制度という選択肢が増えることで、建て替え合意が難しいマンションでの再生の新たな選択の可能性が広がることが期待される。